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『魚河岸』金子洋文著

珍しい本を見つけたのでご紹介。

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『魚河岸』金子洋文著


昭和5年に出版されたものです。

 
著者の金子洋文(1894~1985)氏は、秋田出身のプロレタリア作家、劇作家、演出家。
大正10年、プロレタリア雑誌『種蒔く人』を創刊し、非軍国主義を貫いたという人です。

だからガチガチに固い内容なのかな、と思いきや、読んでビックリ。
テンポが良くてぐいぐい引き込まれます。

昭和初期に「板船」事件という、魚河岸のいわばショバ代をめぐって
疑獄事件にまで発展する大騒動があったのですが、
この本は当時のセンセーショナルな事件に目をつけてます。
でも、伏魔殿的な魚河岸のドロドロをえぐり出しているのかというと、全然そんなことはなくて、
むしろ魚河岸独特の風情をリズミカルに描写していてカッコイイんですね。

舞台は中央市場完成以前のまだバラック建だった築地魚河岸。
荷役の怒号やら軽子の喧嘩やらクレーンの轟音が本当に聞こえるようです。
素人医者アポロ、仲買の大旦那、発動機船の兄い、といったいかにも魚河岸らしい人物が闊歩する世界は、
今もあんまり変わってないんだなあ、と変に感心しました。
月島が河岸の連中のベッドタウンだったり、当時そこに海水浴場(日本初の!)があったりと、
地誌的な面白みもあって、一気に読んじゃいました。