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河岸のサメ男

   hakari.jpg
 
 
これまた明治時代の魚河岸のお話でございます。
今はこの世を去られた河岸の伝説的古老からうかがいました、
魚河岸の鮫男の由来でございます。
 
 

むかしの河岸の人たちはたいそうな博打好きでございました。
朝が早いといいますのに、世間が寝しずまる頃になると、
町内のちょっといわくありげな家の二階なんぞで
張ったり張ったりの勝負に打ち興じます。
 
 
博打というのは、ビギナーズラックといいますか、
最初はわりと勝たせてもらえるので、これは面白いと入れ込むうちに
だんだん負けが込んでくる。
今度はそれを取り返そうと、もうやめられなくなるそうですな、
道楽ですまずに、どうかすると財産も家作も失くしてしまった、
なんて人が、魚河岸にもいたそうです。
 
 
とある老舗魚問屋の大番頭は評判の働き者でございましたが、唯一の欠点が大の博打好き。
毎晩のように賭場へ通いつめては負けが込み、借金でクビが回らなくなると、
とうとう店の金にまで手をつけてしまう、というありまさ。
 
 
「もうダメだ。オレはお仕舞いだ。」
みんなに合わせる顔もない。いっそ海へ身を投げて死んでしまおう、と
夜更けに日本橋川に停泊していた発動汽船を盗みますと、川づたいに東京湾まで出ました。
「ああ、ここいらなら浮かび上がるこたあねえだろう」
沖合いで船を停めまして、自分の足に重りの石をくくりつけ、
今しも海に飛び込もうとしたその瞬間です。
 
 
ザザザザザーッ
 
 
そこへ突然、何の脈略もなく、「ジョーズ」を思わせる巨大サメが
波頭をあげて襲いかかってまいりました。
なぜこんなところにサメが!?
 
 
「誰がテメエなんかのエサになるかい!」
 
 
これから死のうというんだから、食われてしまっても良さそうなものですが、
男は必死の抵抗をこころみ、ついにサメを叩きのめしてしまいました。
「ふう、あぶなく殺られるところだった。しかしでけえヤツだな・・・・・・そうだ!」
 
 
男は何を思ったか、巨大サメを船に積み込むと、魚河岸にとって返しました。
「今朝獲れたての近海ものだよお!」
何とかれは早朝の市立で大サメを売りさばいたんですな。
それでめでたく借金も返したばかりか、自分の店を持つことができたという、
ウソのようなホントのお話でございます。
 

コメント

はじめまして。
「くさや」について調べるうち、こちらのページにたどり着きました。くさやについて書いてある内容(3月31日分)はもちろんですが、どれもとても興味深く、詳しく、勉強になりました。3月31日に登場する講談「松葉のくさや」について調べたいと思っているのですが、出典された資料などは図書館にあったりするのでしょうか?また築地市場にも「くさや」について書いてある昔の資料を閲覧できる場所(資料館のようなもの)はあるのでしょうか?勝手なお願いですみませんがよろしければ教えてください。よろしくお願いします。

まつやま様、
稚拙なものをお楽しみいただけまして、大変うれしく思います。ありがとうございます。

「くさや」のくだりは、
『日本橋魚河岸物語』尾村幸三郎著 青蛙房 昭和59年
『東京歳時記』安住敦著 読売新聞社 昭和50年
を参考にしてふくらませました。
どちらも絶版ですが、江戸東京資料を揃えているような図書館にはたいていあります。

このホームページの出典についてはこちら→http://www.sakanaya.co.jp/literature/index.html 
に列記してあります。
これらの多くは、築地市場内の「銀鱗会(ぎんりんかい)」という図書館に置いてあります。また魚関係の本がたくさんありますので、機会があったら訪ねられると良いと思います。
午前11時頃~午後2時頃まで開館。℡03-3541-7194

でも「くさや」に関するものがあるかどうか…あれば良いですね。
「松葉のくさや」は私も興味がありまして、調べて何か分かりましたらご報告したいと思います。

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