築地魚河岸昔がたり(32)江戸防衛軍の誓い

どうした運命のいたずらか
魚河岸は官軍の江戸総攻撃に備えての防衛軍の役を
買って出ることにあいなりました。
数万の幕府軍を打ち破った官軍に対し、
町人が立ち向かうなど、まるで自殺行為にも等しきもの。
しかし、いったん火のついた魚河岸連中を
止めることなど、誰にもできやいたしません。
命すら捨てる覚悟の魚河岸衆
さっそく武兵衛(たけべえ)総大将に
魚河岸会所(かいしょ)を本陣として
準備万端ぬかりなく 防衛軍を組織する
一 集合・離散には 太鼓鳴り物合図とし 単独行動すべからず
一 いざという時 仮病にて 逃避したるは 以後一切 市場(しじょう)商い差止めのこと
一 軍役の名をば借りての 上納品おこたることを固く禁ず
一 合言葉は舟と言えば水と答えるべし
いかにも素人丸出しの 軍令・規律取り決めて
非常の際には とびきりの 魚河岸兄ぃ千人が
日本橋にずらりと並び 堅固に町を守ります
薩長軍と相構え 戦うべしとの請願を
奉行所に申し出た!
二月に入ると、連日魚河岸会所で軍事会議を行うなど、
準備怠りなくやっておりましたが、
毎日皆で集まれば 炊き出しもある 酒もある
自由に飲み食いしていると 怖さも薄れてまいります
何のあんな田舎者 官軍なんぞは犬の糞(いんのくそ)と
相手が武士だというのも忘れ 心持ちだけどんどんと
大きくなってまいります
酒が入ればいつものとおり 戦時中ということもすっかり忘れ、
寄席で覚えた楠公、諸葛孔明の 軍談に花を咲かせて
すっかり良い心持ちの魚河岸でございます