築地魚河岸昔がたり(33)いざ出陣!

さてもそうこうするうちに
ついに西郷吉之助 大将とする官軍が
品川あたりに迫っているぞと 町方筋の急報に
一気に色めき立ちまする
さそくに太鼓打ち鳴らし いざ出陣のトキの声
飛び出しましたる防衛軍
威勢ばかりは立派だが いくさ装束見てみれば
サシコ半纏 股引きに
草履ばきやら 地下足袋と
頭に巻いた手ぬぐいに染め抜いたるは魚河岸の文字
獲物といえば包丁と 手かぎ 鳶口 商売道具
どこを見ても軍隊と いうより田舎の小芝居の
一座の門出と相成りました
それでも日本橋の際 数百人の者たちが 終結するは勇ましき
各町内の月番が 隊伍 号令整えて ぞろっか揃った兄ぃ連
総大将の武兵衛が ずずっと前に進み出て
各自に指示をいたします
さあて これなる皆の者 よおっく聞いてもらいたい
敵がこちらに向かってきても うかつに出てはいけねえよ
奴(やっこ)さんには 大砲や 鉄砲やらが たんとある
真正面(まっちょうめん)から攻め込んじゃあ
元も子もねえ 身が持たねえ
我らに勝機はただひとつ 敵のスキつく接近戦!
そこで我らはふたつに分かれ
本船町(ほんふなちょう)と 四日市(よっかいち)
両側からのはさみ打ち 肉弾戦に持ち込めりゃ
刀よりもゲンコツだ 弾丸より気組(きぐみ)の勢いだ
我らの力を存分に 奴らに見せて しんぜやしょうかぁ!!
武兵衛は作戦を伝え、全員を鼓舞しながらも、
戦いを前にして手のひらがじっとりと汗ばんでくるのを感じておりました。
しかし、まさにその時でございます。















