氷のなかった時代
魚に氷はいけねえよ
氷というものは、明治のはじめに中川嘉兵衛という人の興した
天然氷製造販売がはじめとされます。
後に機械製氷が現れ、氷産業は明治のベンチャービジネスといえるほどの
一大ブームをまきおこすのですが、氷といえば切っても切れないのが魚。
氷のおかげで魚の保存も輸送も可能になりました。
ところが、そんな便利なものなのに、
魚河岸では何十年ものあいだ、決して使おうとはしなかったんです。
なぜかといえば、「氷は魚には良くない」という奇妙な迷信がまかり通っていたから。
当時は魚に氷を使うのはご法度という暗黙の了解があって
魚というものは籠に入れて一晩夜風にあてて冷やし、
翌日売り出すのが常識だったといいます。おかしなものですね。
それで暑いときはどうしていたかというと、
いまの“COREDO”のところにあったかつての「白木屋」、
ここの掘井戸から冷たい水を汲んで冷やすのが最高! だったんだそうです。

明治初年の白木屋
根のつよい見世と大勢水を汲み
そんな川柳ができるほど、
白木屋の堀井戸は日本橋魚河岸になくてはならない存在でした。
ところが大正時代になると、
たいした理由もなく突然に「こりゃ便利だわい」と、こぞって氷を使い出します。
それじゃそれまでの40年間は何だったのよ!
魚河岸では、あたらしいものを取り入れるのに、世間の何倍もの時間がかかったりするんですね。
コメント
魚河岸で氷を使われなかったのは不思議ですね。
ためになります。
そういう事をどこで調べるんですか?
投稿者: とと | 2006年08月08日 22:54
おおっぴらには使わなかったということで、
少しは使ったかもしれません。
ただ、機械製氷は嫌われたようです。
河岸の古老からうかがいました。
『魚河岸盛衰記』田口達三著 昭和37年 いさな書房
という本にも同様の逸話が載っています。
ネタは昔を知る人に聞くのと、本や史料などで調べています。
投稿者: メカジキ | 2006年08月09日 09:55