« 酒ブタをめぐる冒険(その1) | メイン | テレビの人 »

酒ブタをめぐる冒険(その2)

1971hokima4.jpg
    足立区の風景(昭和46年頃)
 
大体、犬屋敷に行こうなんて最初に言ったのはツヨシのヤツなんだ。
コイツは言いだしたらきかねえ、他人のことなんかちっとも考えねえヤロウだからな。
いや、いいヤツではあるんだよ、二人でいるときにはね。
「チェリオおごってやるよ!」とか言うわけ。
ところが三人以上になると、とたんに自分がリーダーシップとろうとするタイプなんだな。
ヤマピーとオレは顔を見合わせた。
「しょうがねえ、行くか」
 
 
まあ、足どりも重く出かけたんだけどさ、
オレが心配だったのはヤマピーのことだった。
ヤツはガリ勉とかじゃないけど、頭が良くってね、ちょっとハカセくんタイプだ。
で、そういうヤツのお決まりで、運動神経は限りなくゼロなわけ。
野球とかやっても、バットをちゃんとふることもできない。
100メートル走るのに30秒くらいかかるんだよ。
だから今日、コイツはゼッタイに捕まると思ったね。
最初に犬に食われるのはコイツにちがいない。
まったく気の毒に……あ、その間にオレは逃げよう。
 
  1971hokima3.jpg
      団地の子どもたち
 

 
1時間近くかかって、「南団地」に着いたときには、すっかりお腹がすいた。
商店街の肉屋で5コ10円のポテトを買って食べる。
こういうときに金出すのって、いっつもオレなんだよな。
で、これが4コなら問題ないさ。
金出したオレが2コ食って、他のヤツに1コずつやればいいんだから。
でも5コをどうやって分けようか……
と悩むまでもなく、ツヨシのヤローがしゃしゃり出てきて、
「オマエが買ったんだから2コ食っていいよ。オレが2コで、ヤマピーは1コ」
2:2:1だ、と勝手に決めてやがる。
 
 
ダマされたような気分でポテトをかじっていると、
「その袋、オレにくれよう」とヤマピーがいう。
ヤツはポテトの袋に残った揚げカスを食ってやがるんだ。
そのあと、袋をバリバリとやぶり、あろうことか、そいつをペロペロなめはじめた。
 
「これがけっこうイケるんだよね」
なんてヤローだ。
オレはしたたかショクを受けたよ、それが学級委員のやることかね。
今度、立候補してもぜったいに一票入れないからな!
 
 
さて、そうこうするうちに、いよいよ犬屋敷に到着。
いやがうえにも高まる緊張感。
「この宝の山から何としてもレアな酒ブタをうばってやるぞ!」
ツヨシは勇敢にも先頭に立ってなかに入っていく。
2番手はヤマピー。で、オレはシンガリ。
ていうか、さっきのポテトの袋事件が頭をはなれずに、後ろでボウッと突っ立っていた。
するとそのときだ。
 
 
「うおおおおお!!」
 
 
という叫び声と共に屋敷から男が飛び出してきた。
(つづく)