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酒ブタをめぐる冒険(その3)

 
 
「うおおおおおお!!」
突然、屋敷の扉が開いたとたんに、大声を上げて男が追いかけてきた。
 
 
後になって『悪魔のいけにえ』って映画を観たときにデジャヴを起こしたもんさ。
こいつはまるで「南団地の犬男爵」じゃないか、と。
 
 
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    暗渠になっていない下水道
    危険な遊び場には事欠かなかった
 
 
テキサスチェーンソーならぬ、恐怖の犬男爵の登場にオレは腰をぬかしそうになったが、
何よりもぶったまげたのは、100メートル走30秒のヤマピーがだよ、
ものすごい勢いで走って逃げ去ったことなんだ。
いったいどうなってるんだ。
いまだにあれほど足の速い人間にお目にかかったことはない。
アイツきっと地球の裏側まで走ったにちがいない、と思った。
 

  
地獄の光景を前に、オレはどうしたかっていうと、
あいかわらずボウッと突っ立っていたんだが、
あわれにも先頭にいたツヨシはすぐに捕まって、5メートルも投げ飛ばされやがった。
それで、のびたところを首根っこをつかまえられてる。
そのとき犬男爵とオレの目が合った。
「何だ、オマエは、仲間か、どうなのか!?」みたいなことをきかれ、
「ちがうよ、全然仲間じゃない」
と言おうしたのだが、何かうまく口が回らず、まちがって「うん」なんてうなずいちまった。
 
 
 ワン!! ワン!! ワン!! ワワワワ・ワン!!
 
 
犬だよ。やっぱり出てきたよ。
シャレにならないよ、これは。
ダラダラよだれたらしてるし、狂犬病じゃねえの、こいつ。
オレらは犬男爵に持ち上げられ、さんざんぶん回されて、最後に犬をけしかけられた。
もう、いいかげん頭きちゃって叫んだね。
 
 
 「酒ブタとろうとしたくらいで、何でこんな目にあうんだよ!!」
 
 
 
 「ボウズたち、もうこのくらいでいいだろう」
 「いや、まだそっちの方を見てないな」
 「いいかげんにしろよ、もう500個はたまってるじゃねえか!」
 
 
犬男爵は酒ビンの山にのぼって、オレらに酒ブタを集めてくれた。
この集積所にはビン泥棒がよく忍び込むらしい。
オレらを泥棒とまちがえて犬をけしかけた、ってことで、
おわびに酒ブタ取り放題とさせてくれたんだ。
ああ、気持ちがいい。
誰もが恐れて入れなかった宝の山を、全部いただいちまったんだからな。
 
 
サンタみたいなデッカイ袋に酒ブタをいっぱいにつめて帰り道を行くと、
道ばたにヤマピーのヤツがバツ悪そうに立っている。
「オマエは先に逃げたからやんないよ」とか言ったけど、
それはかわいそうだったので、分けることにした。
すると、すかさずツヨシのヤローが出てきて、
 
 
「いいか、オレが3、オマエが2、ヤマピーは1でいい」
 
 
3:2:1だ、と言った。
いつだってそういうヤツなんだよ。
 
 

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昭和40年代にはよく見られたポーズ
じゃあね、バイバイ