Katz
日曜日の昼下がり、友人からもらったチョコの缶を開けて、
そいつを食べながら、寝そべってDVDなど観ていた。
ふと見ると、目の前にチョコがひと粒ころがっている。
缶から飛び出したんだろう。
気にせずに口に入れようとしたけど、何かおかしい。
これウンコじゃないの。
でも、部屋の真ん中にウンコが落ちているのもシュールな話だし、
ためしにボールペンの先でつついてみたら、
転がり方がやっぱりウンコみたい。
しかたないので、ちょっとだけさわってみた。
どうにもウンコっぽい。
で、今度はそいつを鼻先に持ってきて臭いをかぐと、
まさにウンコ。
……こんな時こそ自制心が必要だ。
少なくとも昨晩R.チャンドラーを読んで寝たので、
頭は比較的クールに働いているようだ。
ここはむしろ強気(ブル)で攻めるべきだろう。
人生は時に逆張り(コントラリアン)で挑む姿勢も必要なのだ。
火中に飛び込む者にこそ聖杯が得られるというじゃないか。
チョコかウンコかは食べてみればわかる。
そう私が意を決したとき――ヤツと目が合った。
うわああああ……あ!
不意に我に返って、洗面所にかけこむと、
ハンドソープで何度も手を洗い、さらに念入りに消毒液をかけて、
タワシでゴシゴシこすって、さらにまた石鹸で洗った。
なんてこったい! 危なくご馳走されるところだ!
ヤツが家に来てから10年このかた、私は何度もたぶらかされてきた。
そればかりか、年齢ごとに、そのふてぶてしさも増してきて、
近頃じゃあ、ヤツの尾の先はふたつに割れてきているのだ。