金華楼のチャーハン

むかし足立区梅島の環七近くに金華楼という中華屋さんがあった。
カウンターだけの小さな店で、一節太郎ばりのダミ声のおじさんがやっていた。
小っちゃいギョウザが人気で、地元のお客がよく銭湯帰りに買って帰ってた。
でも僕はここのチャーハンこそは一度食べたら忘れられない、 えもいわれぬ美味しさだったと思う。
ある晩、他のお客のいないときに、
カウンター越しに、おじさんからその作り方を教えてもらった。
「どうやったらそんなふうにつくれるの?」「ああ、教えてやるよ」
みたいな感じで、気楽に教えてくれたけど、もちろんその通りやったって同じ味にはならなかった。
中華なべに油をはって、やや弱火で玉ねぎをゆっくりと炒める
とき玉子を流し込んで、強火、固まったらご飯を入れて振る
中華スープ、塩、こしょうで味を整え、鍋はだに醤油をふって香りづけ
最後に日本酒をふってテリを出す(これはおじさんはやっていなかったけど)
いろいろ工夫してかなり近づけたと思うけど99.9%、
あと0.1%は永遠に届きそうにない。
もういちど本物を食べられたら、と思うけど、それはもう適わないことだ。
たまに思い出したようにつくる金華楼チャーハンもどき。
食べるとちょっと元気になり、少しだけ淋しくなる。
なつかしいおじさんのダミ声を思い出す。